「年長なのに、まだ足し算ができない……」
「何度教えても分からないけれど、小学校へ入ってから困らない?」
年長になると、まわりの子が足し算をしている話を聞くことがあります。
指を使わずに計算できる子や、繰り上がりの計算を始めている子を見ると、焦ってしまいますよね。
けれど、年長で足し算ができないからといって、すぐに「算数が苦手」「入学後についていけない」と判断する必要はありません。
足し算でつまずく場所は、子どもによって違います。
数の順番がまだ不安定なこともあれば、実物は合わせられるけれど「+」を使った式になると分からないこともあります。
大切なのは、計算問題を繰り返すことではなく、どの段階で分からなくなっているかを見つけることです。
この記事では、年長で足し算ができないときに確認したい数の土台と、現在地に合った教え方を、教材編集者の視点から分かりやすく解説します。
数字、数唱、引き算なども含めた入学前の算数全体の目安は、年長の算数はどこまで?小学校入学前に育てたい数の力でまとめています。
【結論】年長で足し算ができなくても入学前に完璧にする必要はない
足し算は小学校1年生で学習する
小学校入学前に、足し算の計算問題をすらすら解けるようにしておくことは必須ではありません。
文部科学省の「小学校学習指導要領解説 算数編」では、小学校1年生で具体的な場面と結びつけながら、加法の意味や計算方法を学ぶことが示されています。
つまり、小学校では「すでに足し算が完成していること」を前提にするのではなく、入学後に授業の中で学んでいきます。
また、文部科学省の「幼稚園教育要領解説」では、幼児期の数量に関する指導について、確実に数えられるよう習熟させることを目指すのではなく、生活や遊びの中で数量への興味や感覚を豊かにすることが大切だと説明されています。
POINT
入学前は、式を見て暗算できることより、実物を合わせて「全部でいくつ」を考えられることを大切にしましょう。
「合わせると増える」が分かれば足し算の土台になる
足し算の入り口は「1+2=3」という式ではありません。
- 2個のお菓子に1個加えると、全部で3個になる
- 3人いるところへ1人来ると、4人になる
- ブロックを1個増やすと、全体の数も1つ増える
- 2つのグループを合わせて、最初から数え直せる
このような具体的な場面を理解できていれば、式が読めなくても足し算につながる考え方は育っています。
答えを言えることと足し算を理解していることは同じではない
「2+3=5」と覚えていても、2個と3個を合わせる場面が分からないことがあります。
反対に、式を見ただけでは答えられなくても、おはじきを動かして5個と答えられるなら、数量を使って考えられています。
入学前は答えの速さだけでなく、「どうやって考えたの?」と過程を見ることが大切です。
年長で足し算ができない5つの原因
足し算が分からないとき、計算練習が足りないとは限りません。次の5つのうち、どこで止まっているかを確認してみましょう。
原因1|数の順番がまだ安定していない
足し算では、数が1つ増えると次の数になることを使います。そのため、数の順番がまだ不安定だと、答えを考えることが難しくなります。
- 1から数える途中で数字が抜ける
- 5の次の数がすぐに出てこない
- 「4から数えてみよう」と言われると止まる
- 数字の前後関係が分かりにくい
この段階では足し算ワークを増やさず、階段やすごろくを使って数の並びに親しみます。「4の次は?」「7の一つ前は?」というやり取りもおすすめです。
原因2|物と数が一対一で対応していない
数字を順番に言えても、物を正しく数えられるとは限りません。
- 同じ物を2回数える
- 数える途中で物を飛ばす
- 並び方を変えると個数が変わったと思う
- 「3個ちょうだい」と言われても正しい数を取れない
まずは3〜5個程度の少ない物を横一列に並べ、一つずつ動かしながら数えましょう。最後に「全部でいくつ?」と確認するところまでが大切です。
数唱はできるのに個数が分からない場合は、数えられるのに個数が分からないときに確認したい数の概念で、1対1対応や「全部でいくつ」の理解を詳しく解説しています。
原因3|「合わせる」という意味が分かっていない
足し算では、2つの数量を合わせたり、最初の数量から増えたりする場面を扱います。
- 「全部でいくつ?」の意味が分からない
- 2つのグループを別々に数えて終わる
- 増えたのか減ったのか判断できない
- 足し算と引き算のどちらを使うか迷う
左右に置いたおはじきを中央へ集め、「2個と3個を合わせたね。全部でいくつ?」と、動作と言葉を一致させましょう。
原因4|数字と数量が結びついていない
数字を読めても、その数字が表す量を理解していないことがあります。
- 数字の「3」は読めるが、3個の物を選べない
- 数字カードと同じ数のブロックを用意できない
- 数が少し大きくなると急に分からなくなる
- 数字を書くことに集中し、数量を考えられない
数字カードの横に同じ数のおはじきを置くなど、数字と実物を対応させます。最初は1〜5程度の数から始めても構いません。
数える・読む・書くを含めた数字の理解は、数字はどこまでできればいい?数える・読む・書く・計算の目安も参考になります。
原因5|実物から式へ進むのが早すぎる
ブロックなら答えられるのに、「2+3=」と書かれると分からなくなることもあります。
足し算の場面を式で表すには、実物を数字へ置き換え、「+」や「=」の意味を理解する必要があります。実物から式へ一度に進むと、数の意味より記号の暗記になりやすいものです。
実物、絵、数字、式の順に、一段ずつ抽象化していきましょう。

足し算を始める前に確認したい7つのこと
次の項目は、足し算の学習へ進む前に確認したい数の土台です。
- 1〜10程度の数を順番に言える
- 5個程度の物を一つずつ数えられる
- 「3個ちょうだい」に応じられる
- 3個と5個のどちらが多いか分かる
- 1個増えると全体も1つ増えると分かる
- 2つのグループを集めて数えられる
- 数字と数量を対応させられる
すべてできることを足し算開始の条件にする必要はありません。難しい項目が見つかったら、そこが今の取り組みを決める手がかりになります。
教材編集者MEMO
「足し算ができない」とひとまとめにせず、数えるところで間違えるのか、合わせる意味が分からないのか、式だけが難しいのかを分けて見ます。教材を選ぶときも、この現在地に合っているかが重要です。

【現在地別】年長の足し算の教え方
物を数えるところで間違える場合
まずは足し算を休み、物を正しく数える経験へ戻ります。
- 3個程度の少ない数から始める
- 物を横一列に並べる
- 数えた物を一つずつ別の場所へ動かす
- 最後に「全部で3個」と確認する
5個が安定したら、少しずつ個数を増やします。早く10や20へ進むことより、数えた数と実際の個数が一致することを優先しましょう。
実物なら分かるけれど絵では分からない場合
実物と同じ並びを、丸や簡単な絵で表します。
たとえば、赤いブロック2個と紫のブロック1個を置いたあと、紙にも赤い丸を2つ、紫の丸を1つ描きます。実物と絵が同じ数量を表していることを確認しましょう。
自分で絵を描くことに負担がある場合は、大人が描いても構いません。目的は上手に描くことではなく、実物を絵に置き換えることです。
絵なら分かるけれど式では分からない場合
絵の下に、それぞれの数量を表す数字を書きます。
- 丸を2つと3つ描く
- それぞれの下に「2」「3」と書く
- 「2個と3個を合わせた」と声に出す
- 「2+3=5」の式を添える
式を先に見せるのではなく、子どもが理解できている絵に式を添えるのがポイントです。
指を使えば答えられる場合
年長で指を使って足し算をしていても、すぐにやめさせる必要はありません。
指は、頭の中だけでは捉えにくい数量を目で確認するための身近な道具です。指を使って答えられるなら、「増えた数を一つずつ数える」という方法を使えていると考えられます。
「もう年長だから指を使わないで」と禁止するより、どの指を出して、どこから数えたのかを聞いてみましょう。
答えは出せるけれど文章問題が苦手な場合
計算はできても、問題文の場面を思い浮かべることが難しい場合があります。
- 問題文を大人が読んでみる
- 登場する物をブロックで置く
- 増えたのか、減ったのかを確認する
- 絵を描いて場面を見えるようにする
- 子どもの言葉で問題を説明してもらう
計算そのものではなく、問題文を読むことや言葉の意味が負担になっていないかも見てみましょう。

年長の足し算は5のまとまりから始めよう
まずは5をいくつといくつに分ける
足し算の練習を始めるなら、いきなり10までの計算問題を並べるより、5個の物を分ける遊びから始めると取り組みやすくなります。
- 5は1と4
- 5は2と3
- 5は3と2
- 5は4と1
5個のおはじきを両手に分け、片方だけを見せて「こっちに2個あるよ。もう片方はいくつかな?」と当てっこします。
5に慣れたら10の合成・分解へ進む
5の組み合わせに慣れてきたら、同じ方法で10個を分けます。
- 10は1と9
- 10は2と8
- 10は3と7
- 10は4と6
- 10は5と5
すべての組み合わせを入学前に暗記させる必要はありません。実際に物を分ける中で、「10はこんなふうに分けられる」と気づくことを大切にしましょう。
最初の足し算は「+1」から
「+1」は、1個増えると次の数になることを理解しやすい足し算です。
- 2個に1個足す
- 3人に1人加わる
- すごろくで4マス進んだあと、もう1マス進む
「2+1は?」と式だけで聞く前に、実際に1個増える様子を見せましょう。
具体物から絵、数字、式へ進む基本的な教え方は、次の記事で詳しく紹介しています。
なお、4歳・年中段階の到達目安を確認したい方は、4歳の足し算はどこまで?できないと遅い?も参考にしてください。
年長の足し算を生活の中で練習する方法
おやつを合わせる
「お皿にクッキーが2個あるね。あと1個出したら、全部でいくつ?」と聞き、実際におやつを動かします。
正解を求めるだけでなく、「最初はいくつだった?」「何個増えた?」と変化を確認しましょう。
買い物で個数を増やす
「りんごを2個入れたよ。あと1個入れたらいくつ?」と、買い物かごへ入れながら数えます。値段の計算まで行わなくても、個数を考えるだけで足し算につながります。
すごろくで追加の1マスを進む
「3マス進んで、ボーナスでもう1マス」のように遊びます。数の順番や、増える感覚も一緒に経験できます。
ブロックをつなげる
赤いブロックを2個、紫のブロックを3個つなげ、色ごとの数と全体の数を確認します。色を分けることで、2つの数量を合わせたことが見えやすくなります。
家族の人数を考える
「今は3人いるね。パパが帰ってきたら何人になる?」など、身近な人数を使います。
わが家の場合
わが家では、娘が簡単な足し算や引き算に興味を示したときも、答えだけを覚えさせるのではなく、おやつや指、身近な物を使って確認しています。計算が分からなくなったときは、ワークの枚数を増やすより、実際に物を動かすほうが納得しやすいと感じます。
年長の足し算練習で避けたいこと
できるまで同じ問題を繰り返す
分からない状態のまま同じ計算問題を繰り返しても、負担が増えることがあります。
間違いが続いたら、数える、合わせる、絵で表すなど、一段階前の活動へ戻りましょう。簡単な課題へ戻ることは後退ではなく、理解を整えるための方法です。
指を使うことを禁止する
指を使わずに答えられることだけを目標にすると、子どもが数量を確認する手段を失ってしまう場合があります。
まずは指を使って考え、慣れてきたら5や10のまとまりを使う方法へ少しずつ広げましょう。
答えを速く言わせる
入学前は計算速度よりも、なぜその答えになるのかを理解することが大切です。
急かされると、考える前に当てずっぽうで答えるようになることもあります。答えを待ち、「どうやって考えた?」と過程を聞いてみましょう。
繰り上がりまで先取りする
繰り上がりのある足し算は、小学校で数の構成を確認しながら学習します。本人が興味をもっている場合を除き、入学前の必須課題にする必要はありません。
注意
年長だからと計算問題の量を増やすより、分からなくなった段階まで戻るほうが理解につながることがあります。嫌がる日は、ワークを数遊びへ置き換えても大丈夫です。
年長向け足し算ワークの選び方
足し算の意味が曖昧なら絵が多いワーク
数字だけの式ではなく、食べ物や動物、丸などの絵を数える問題が多いワークを選びます。
「合わせる前」と「合わせたあと」が絵で分かるものなら、足し算の場面を理解しやすくなります。
数量が分かるなら合成・分解を扱うワーク
実物を合わせて答えられるようになったら、5や10をいくつといくつに分ける問題があるワークへ進みます。
答えを暗記するページだけでなく、おはじきや丸、数図などで数量を確認できるものがおすすめです。
式中心のワークは記号の意味が分かってから
「+」「=」の意味が分かり、絵と式を対応させられるようになったら、式中心の問題へ進みます。
一度に取り組む量が多すぎず、見本や説明がすぐ近くにある教材を選びましょう。
数字だけでなく、文字・時計・思考力などもバランスよく取り組みたい方は、こどもちゃれんじ年長〈じゃんぷ〉の内容・料金・入学準備も参考にしてください。
年長で足し算ができないときの相談目安
足し算ができないことだけで、発達上の問題や算数障害だと判断することはできません。幼児期は数量の理解にも個人差があります。
一方で、次のような心配が重なる場合は、一人で抱え込まずに相談してみてもよいでしょう。
- 数字以外の言葉や指示の理解も気になる
- 少ない物でも一つずつ数えることが難しい
- 本人が強く困ったり、学習を極端に嫌がったりしている
- 見え方や聞こえ方、手先の動かしにくさが気になる
- 入学後に必要な配慮について相談したい
まずは園の先生に普段の様子を聞き、必要に応じて自治体の就学相談や子育て・発達相談窓口を利用します。
「入学までにできるようにしなければ」と急ぐためではなく、子どもが学びやすい方法を一緒に考えるための相談です。
年長の足し算に関するよくある質問
年長で足し算ができないのは遅いですか?
足し算ができないことだけで、遅いとは判断できません。足し算は小学校1年生で学習します。入学前は、物を正しく数え、2つのグループを合わせて全部の数を考える経験を大切にしましょう。
小学校入学前に何まで計算できればいいですか?
文部科学省が示す幼児教育に「入学までに何まで計算できるようにする」という一律の到達基準はありません。実物を使って10程度までの数量を扱い、「合わせると増える」という意味に親しんでおくと、小学校の学習につながります。
指を使って足し算をしても大丈夫ですか?
大丈夫です。指は数量を目で確認するための身近な道具です。無理に使わせないようにするより、まずは指を使って考え方を確認し、5や10のまとまりへ少しずつつなげましょう。
足し算を教えても理解できないときはどうすればいいですか?
計算問題を増やさず、物を正しく数えられるか、数字と数量が結びついているか、「合わせる」の意味が分かるかを確認します。子どもが理解できる段階まで戻り、実物から始めましょう。
年長は暗算できたほうがいいですか?
入学前から暗算できることは必須ではありません。おはじきや指、絵を使って答えを考えられるなら、その方法を大切にします。数量の理解が進むにつれて、少しずつ頭の中で考えられる場面も増えていきます。
10の合成・分解は暗記させるべきですか?
入学前にすべて暗記させる必要はありません。10個のおはじきを2つのグループに分けるなど、実物を使ってさまざまな組み合わせを経験しましょう。
引き算も一緒に教えたほうがいいですか?
足し算がまだ難しい場合は、引き算の式まで同時に進めなくても構いません。ただし、おやつを食べて残りを数えるなど、「取ると減る」という経験は生活の中で取り入れられます。
まとめ|足し算ができないときは分かる段階まで戻ろう
年長で足し算ができなくても、入学前に計算を完璧にする必要はありません。
- 足し算は小学校1年生で学習する
- 数の順番、計数、数量、足し算の意味を分けて確認する
- 実物、絵、数字、式の順に進める
- 指を使うことを無理にやめさせない
- 5や10の合成・分解は、物を使って経験する
- 計算量より「なぜその答えになるか」を大切にする
入学までに答えを速く出せるようにするより、「合わせたら増えるんだ」と納得できる経験を重ねることが、これからの算数を支える土台になります。
足し算以外の数字や引き算も含めて現在地を確認したい方は、年長の算数はどこまで?数字・足し算など小学校入学前に育てたい数の力もあわせてチェックしてみてください。