「やめて」と言ったばかりなのに、また同じことをする。
真剣に注意しているのに笑ったり、さらにふざけたりする。
何度伝えてもやめてくれないと、「分かっていて、わざとやっているの?」とイライラしてしまいますよね。
わが家の娘も現在4歳です。「もうやめようね」と伝えても、なかなかやめられないことがあり、私自身も悩んでいます。
教材編集者として子どもの発達について調べたり、教材で使う言葉を考えたりしてきました。それでも、わが子を前にすると、つい「何回言ったら分かるの?」と思ってしまいます。
ただ、4歳は言葉の意味を理解できるようになっていても、気持ちや衝動を抑え、行動を切り替える力はまだ発達の途中です。「やめて」が分からないのではなく、分かっていてもその場ですぐには止まれないことがあります。
この記事では、4歳が「やめて」と言ってもやめない理由と、家庭で試しやすい伝え方を紹介します。
POINT
「言葉の意味が分かること」と「気持ちを抑えて行動を止めること」は同じではありません。叱る回数を増やす前に、伝え方や環境を変えてみましょう。
4歳が「やめて」と言ってもやめないのはなぜ?
4歳にもなると会話がかなり成り立つため、大人は「言えば分かるはず」と考えがちです。
しかし、話を理解する力が伸びることと、自分の行動をコントロールできることは別です。
ハーバード大学子ども発達センターは、注意を向ける、衝動を抑える、情報を覚えて使う、行動を切り替えるといった実行機能・自己調整の力は、生まれたときから完成しているのではなく、子ども時代から青年期にかけて発達すると説明しています。
そのため、4歳がすぐに止まれないからといって、必ずしも「親の話を聞く気がない」「しつけができていない」とは限りません。
遊びや行動に夢中になっている
遊びに集中していたり、気持ちが高ぶっていたりすると、大人の声が聞こえていても、言葉の内容を受け取って行動を変えるところまで進めないことがあります。
遠くから何度も「やめて!」と言っても反応しないときは、無視していると決めつけず、近くへ行って注意をこちらに向けてから伝えてみましょう。
「やめて」だけでは次の行動が分からない
「走らない」「触らない」「ふざけない」という言葉は、してはいけないことを示しています。しかし、その代わりに何をすればよいのかまでは伝えていません。
米国疾病予防管理センター(CDC)も、幼児には一度に一つの指示を出し、「だめ」と伝えるときは、代わりにしてほしい行動を示すよう勧めています。
親の反応が楽しくなっている
大人が大声を出す、追いかける、何度も話しかけるといった反応が、子どもにとって強い注目になることもあります。
これは「親を困らせよう」と計画しているという意味ではありません。行動のあとに大きな反応が返ってくる経験が重なることで、同じやり取りを繰り返す場合があるということです。
危険ではない軽いふざけには過剰に反応せず、望ましい行動ができたときにしっかり注目する方法もあります。
疲れや空腹で余裕がなくなっている
眠い、疲れた、おなかがすいたという状態では、普段できることができなくなる場合があります。
「夕方に多い」「園から帰った直後に増える」などの傾向がないか見てみると、その子に合った予防策を考えやすくなります。
教材編集者MEMO
4歳がやめないときは、「分かっているか」だけでなく、「今、その行動を止められる状態か」「次に何をすればよいか分かる言葉になっているか」という視点で考えてみましょう。

「やめて」と言ってもやめないときの対応5つ
1.近くへ行き、一つのことを短く伝える
まずは子どもの近くへ行き、名前を呼ぶなどして注意をこちらへ向けます。そのうえで、今してほしいことを一つだけ伝えましょう。
「何回言ったら分かるの。危ないし、さっきも注意したでしょう」と説明を重ねるより、「止まろう」「鉛筆を机に置こう」と短く伝えるほうが、行動に移しやすくなります。
CDCも、幼児への指示は一度に一つにし、叫んだり頼み込んだりせず、落ち着いた声で伝えることを推奨しています。
2.「やめて」を、してほしい行動に言い換える
禁止する言葉だけで終わらせず、代わりにしてほしい行動を具体的に示します。

「走らないで」と言うこと自体が悪いわけではありません。危険をすぐ知らせる必要がある場面もあります。ただ、そのあとに「歩こう」と加えると、子どもが次の行動を選びやすくなります。
3.終わりを予告して切り替えやすくする
楽しく遊んでいる最中に突然「おしまい」と言われても、気持ちをすぐに切り替えるのは難しいものです。
- あと5分で終わりにしよう
- あと3回滑ったら帰ろう
- 長い針が6になったら片づけよう
このように終わりを具体的に示します。タイマーも役立ちますが、鳴ったら必ず切り替えられるとは限りません。最初は大人が一緒に片づけるなど、行動を始める手助けも必要です。
4.やめられた瞬間を具体的に認める
困った行動には目が向きやすい一方、できているときは見過ごしてしまいがちです。
子どもが止まれたら、「えらいね」だけでなく、できた行動をそのまま言葉にしてみましょう。
- やめてと言ったら、手を離せたね
- 歩こうと言ったら、すぐ歩けたね
- おもちゃを机に置けたね
CDCも、望ましい行動を具体的な言葉で認めると、子どもが何を正しくできたのか理解しやすいと説明しています。
5.繰り返す行動は環境から予防する
毎回同じことで注意しているなら、声かけだけで解決しようとせず、環境も見直します。
- 投げると危ない物は手の届かない場所へ移す
- 外出前に「お店の中は歩く」と確認する
- 疲れやすい時間帯の予定を詰め込みすぎない
- 遊びを終える時刻を事前に知らせる
CDCは、家庭のルールや生活の流れを一貫させ、子どもが次に何が起きるか予測できる状態をつくることも重視しています。

わが家の実体験
わが家でも、娘がなかなかやめないと、離れたところから何度も「やめて」と繰り返してしまいます。
振り返ってみると、私はやめてほしいことばかり伝え、その代わりに何をしてほしいのかまでは言えていないことがありました。
現在は、「やめて」だけで終わらせず、「手を離そう」「ここに置こう」など、次の行動を短く伝えることを意識しています。すぐに何もかも変わるわけではありませんが、娘だけの問題にせず、伝え方も一緒に見直していきたいと思っています。
友達やきょうだいが「やめて」と言っても続ける場合
親の指示を聞かない場合と、友達やきょうだいが嫌がっているのに続ける場合は、少し分けて考える必要があります。
ふざけ合っていると、4歳の子どもは相手も楽しんでいると思っているかもしれません。興奮していて、相手の表情や声の変化に気づけないこともあります。
相手が「やめて」と言ったら、大人が「やめてと言ったら、おしまいだよ」「手を離そう」と短く伝え、その場で行動を止めます。
興奮している最中に長く説教するより、まず子ども同士を離して落ち着かせ、あとから「次はどうしたらいいかな」と確認するほうが話しやすくなります。
注意・補足
たたく、かむ、首を締める、道路へ飛び出すなど、安全に関わる行動は、言葉だけで納得させようとせず、大人がすぐに止めてください。理由を説明するのは安全を確保し、親子ともに落ち着いてからで構いません。
注意すると笑う・ふざけるのは反省していないから?
こちらが真剣に注意しているのに笑われると、さらに腹が立ってしまいますよね。
しかし、笑う理由は一つではありません。
- 楽しい気持ちや興奮がまだ続いている
- 注意されるやり取りを遊びのように受け取っている
- 緊張や気まずさを笑いで表している
- どう反応したらよいか分からない
笑ったという行動だけから、「反省していない」「親をばかにしている」とは判断できません。
笑いを止めさせることに集中するより、「今は手を止めるよ」と必要な行動を淡々と伝えましょう。
やめてと言ってもやめないのは発達障害が原因?
何度注意しても同じ行動を繰り返すと、「発達障害やADHDなのでは?」と心配になることもあるでしょう。
ただし、「やめてと言ってもやめない」という一つの行動だけで、発達障害かどうかを判断することはできません。
自己調整や衝動を抑える力が発達途中であること、夢中になっていること、疲れや環境など、さまざまな理由が考えられます。この記事で紹介した対応も、発達障害の有無にかかわらず試せるものです。
心配なときは、行動の回数だけでなく、次のような点を確認してみましょう。
- 家庭だけでなく、園でも同じ困りごとがある
- 友達関係や集団生活への影響が続いている
- 危険な行動が多く、安全を保つのが難しい
- 本人も困ったり、つらそうにしたりしている
- 保護者が対応に疲れ、追い詰められている
気になる場合は、まず園の先生やかかりつけの小児科、市区町村の保健センターなどに相談できます。厚生労働省も、子どもの行動やこころの問題について受診すべきか迷う場合、地域の保健所や保健センターなどの公的な相談窓口を利用できると案内しています。
発達障害に関する専門的な相談先として、各都道府県・指定都市には発達障害者支援センターも設置されています。
相談は診断を決めることではありません
「発達障害かどうかを知りたい」という段階でなくても、「家庭でどのように対応したらよいか相談したい」と伝えて大丈夫です。保護者がつらいと感じていることも、相談してよい理由の一つです。
何度言ってもやめない子にイライラしてしまったら
毎日同じことを注意していると、落ち着いて対応し続けるのは簡単ではありません。
私も、「短く伝えよう」「感情的にならないようにしよう」と頭では分かっていても、娘に何度も繰り返されると余裕がなくなることがあります。
危険がなければ、その場ですべてを理解させようとせず、少し間を置いても構いません。安全を確保したうえで深呼吸する、水を飲む、別の大人に交代してもらうなど、親側が落ち着く時間も必要です。
もし大きな声で怒ってしまったら、あとから「大きな声で言ってごめんね。危なかったから止めたかったんだ」と伝え直せます。
4歳の子どもが一度でできないように、親も毎回完璧に対応できるわけではありません。親子で少しずつ、止まりやすい方法を探していけば大丈夫です。
まとめ|「やめて」のあとに次の行動を伝えよう
4歳は言葉の意味を理解できるようになっていても、衝動を抑えたり、夢中になっている行動を切り替えたりする力はまだ発達の途中です。
「やめて」と言ってもやめないからといって、すぐに「わざと困らせている」「しつけができていない」と考える必要はありません。
- 近くへ行き、一度に一つのことを短く伝える
- 「やめて」のあとに、してほしい行動を伝える
- 遊びの終わりをあらかじめ予告する
- 止まれた瞬間を具体的に認める
- 繰り返す行動は環境から予防する
まずは「走らないで」を「歩こう」に変えるように、次にしてほしい行動を一つ伝えるところから始めてみてください。
すぐに変化が見られなくても、伝え方を変えたのに効果がないと焦る必要はありません。4歳の子どもは、大人に支えてもらいながら少しずつ行動を調整する力を身につけていきます。
4歳の生活面・学習面の成長の目安は、こちらの記事にまとめています。
参考文献
- Center on the Developing Child at Harvard University「What Is Executive Function? And How Does It Relate to Child Development?」
- Center on the Developing Child at Harvard University「Enhancing and Practicing Executive Function Skills」
- Centers for Disease Control and Prevention「Tips for Giving Directions」
- Centers for Disease Control and Prevention「Positive Parenting Tips: Preschoolers」
- Centers for Disease Control and Prevention「Tips for Using Praise and Rewards」
- 厚生労働省「こころの相談窓口」
- 国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害情報・支援センター」