「年中になったけれど、ひらがながまだ書けない」
「同じクラスの子は縄跳びができるみたい。うちは全然……」
「着替えもまだ手伝っているけれど、そろそろ全部一人でできないとダメ?」
年中さんになると、こんなふうに「周りの子のできること」が気になってきませんか。
年少さんのころはそれほど気にならなかったのに、お友達からお手紙をもらったり、園でできるようになったことを聞いたりすると、
「年中って、どこまでできればいいんだろう?」
と不安になることがあります。
私も幼児向けを含む教材の編集に携わっていますが、年中さんについて考えるときに大切にしているのは、「何ができるか」だけで子どもを見ないことです。
幼児期に育っていくのは、ひらがなや数字だけではありません。
自分でやってみる。
友達と一緒に遊ぶ。
「どうしたらいいかな?」と考える。
走る、跳ぶ、投げる。
見つけたものを言葉にする。
こうした経験も、すべて小学校以降の学びにつながっていきます。
この記事では、「年中なら絶対にできていなければいけないこと」ではなく、4・5歳ごろから少しずつ経験を増やしていきたいことを、勉強・生活・手先・運動・コミュニケーションに分けて紹介します。
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contents
年中で「全部できる」を目指さなくて大丈夫
最初に、いちばん伝えたいことがあります。
この記事に出てくることを、年中のうちに全部クリアする必要はありません。
文部科学省は、幼児教育で育みたい姿として「健康な心と体」「自立心」「協同性」「思考力の芽生え」「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」「言葉による伝え合い」など、10の視点を示しています。
つまり、幼児期の成長は「ひらがなが何文字書けるか」のような一つの物差しでは測れません。
この記事でも、できた・できないを判定するチェックリストではなく、
「最近、この経験はできているかな?」
と考えるヒントとして見ていただけたらと思います。
| 分野 | 年中ごろから増やしたい経験 |
|---|---|
| ことば・文字 | 絵本、会話、文字探し、言葉遊び |
| 数・思考 | 数える、比べる、分ける、考える |
| 生活 | 着替え、片づけ、お手伝い |
| 手先 | 描く、切る、貼る、折る |
| 運動 | 走る、跳ぶ、投げる、登る |
| 社会性 | 話す、聞く、順番、ルール |
| 自立 | 自分で選ぶ、考える、やってみる |
「全部できる?」ではなく、いろいろな経験が少しずつ広がっているかを見ていきましょう。

【勉強】年中で経験しておきたいこと
年中になると、ひらがなや数字が気になる家庭も増えてきます。
ただ、ここで「年中だから勉強を始めなければ」と焦る必要はありません。
幼児期の学びは、机の前だけで起こるものではないからです。

ひらがなや身近な文字に興味をもつ
年中になると、
「これ、なんて書いてあるの?」
「○○ちゃんの“あ”だ!」
と文字に興味をもつ子もいます。
そんな姿が見えたら、文字に触れるチャンスです。
お菓子のパッケージ、看板、絵本、自分の名前。
生活の中には文字がたくさんあります。
この時期は、ひらがな46文字を全部覚えることより、「文字っておもしろい」と思える経験を増やすことを大切にしたいところです。
文部科学省が示す幼児期の姿にも、「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」が含まれています。
「文字を書けること」だけではなく、身近な文字に気づき、興味をもつこと自体が幼児期の大切な学びです。
「読める」と「書ける」は分けて考える
「ひらがなは読めるのに、全然書けない」という相談もよくあります。
でも、ここは分けて考えたいところです。
文字を見て読むことと、自分で文字の形を再現することは同じではありません。
書く場合も、
線を描く
↓
形をなぞる
↓
文字をなぞる
↓
見本を見ながら書く
↓
見本なしで書く
と、少しずつできることが増えていきます。
だから、読めるのに書けないからといって、すぐに「遅れている」と考える必要はありません。
書くことを嫌がるなら、文字練習を増やすより、迷路やお絵描きなどへ戻ってみるのも一つです。
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数字を「言える」だけでなく、実物と結びつける
数字についても同じです。
「100まで言える!」
というのはもちろん素敵な成長ですが、幼児期の数の学びでは、数字を順番に唱えることだけでなく、実際の数量と結びつけていく経験も大切です。
たとえば、
「いちごを3個取って」
「こっちとこっち、どちらが多い?」
「4人いるから、お皿はいくつ必要?」
など。
こうしたやりとりなら、特別な教材がなくてもできます。
おやつを分ける。
階段を数える。
買い物でリンゴを3個かごに入れる。
生活そのものが、数の教材になります。
年中だから「○まで数えられなければ」と数字だけを追いかけるより、数が生活の中で何を表しているのかを経験することを大切にしたいです。
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比べる・分ける・順番を考える
年中ごろには、文字と数字以外の「考える遊び」もぜひ取り入れてみてください。
たとえば、
赤いものだけ集める。
大きい順に並べる。
仲間ではないものを探す。
簡単な迷路をする。
同じ形を見つける。
「次は何かな?」と規則を考える。
こうした遊びです。
一見「勉強」には見えませんが、分類、比較、順序、規則性、空間認識など、後の学習につながる考え方がたくさん含まれています。
ワークが好きな子なら、市販の「ちえ」「思考力」系ワークを取り入れるのもいいでしょう。
ただし、難しい問題を解けることを目標にする必要はありません。
「あれ?どうなるんだろう」と考える時間そのものを楽しむ。
年中では、そんな経験を増やしたいと思っています。
【生活】年中で少しずつ身につけたいこと
年中になると、勉強以上に大きく成長するのが生活面です。
全部を一人でできる必要はありません。
「自分でやってみよう」とする場面を少しずつ増やしていきます。
自分で着替えてみる
ズボンをはく。
靴下をはく。
上着を着る。
ファスナーを上げる。
ボタンを留める。
着替え一つとっても、実はたくさんの動作があります。
「年中なのに一人で着替えられない」とまとめて考えるより、
どこまでは一人でできる?
と細かく見てみると、できることが見つかりやすくなります。
ボタンだけ難しいなら、そこだけ手伝ってもいい。
「全部自分で」ではなく、自分でできる部分を少しずつ増やすくらいで十分です。
トイレや手洗いなど身の回りのことを自分でやってみる
トイレへ行く。
衣服を上げ下げする。
手を洗う。
手を拭く。
こうした生活動作も、毎日の積み重ねで少しずつ身についていきます。
ここでも大事なのは、失敗しないことではありません。
できないときに、
「手伝って」と言えることも大切な力です◎
自分のものを片づける
幼稚園バッグを置く。
靴をそろえる。
脱いだ服をかごへ入れる。
遊んだおもちゃを戻す。
「片づけなさい!」だけでは難しい場合は、
戻す場所を分かりやすくする
だけでも変わります。
写真やイラストを貼ったり、かごを分けたりすると、「自分でできる仕組み」を作りやすくなります。
簡単なお手伝いをする
年中さんなら、家庭のお手伝いも立派な学びになります。
お箸を並べる。
食器を運ぶ。
テーブルを拭く。
洗濯物をかごへ入れる。
お手伝いには、手先を使うだけでなく、
「家族のために自分もできることがある」
と感じられるよさがあります。
難しい仕事を任せる必要はありません。
毎日できる小さな役割を一つ作るだけでも十分です。

【手先】描く・切る・貼るをたくさん経験しよう

「ひらがながうまく書けない」
というと、つい文字の練習を増やしたくなります。
でも年中なら、文字以外の手先遊びもたっぷり経験してほしい時期です。
線や形を自由に描く
直線、曲線、丸、ジグザグ。
お絵描きや迷路をしていると、いろいろな方向へ手を動かします。
きれいに描く必要はありません。
大きな紙にぐるぐる描くところからでもOK。
「鉛筆を正しく持たせなきゃ」と持ち方ばかり気にするより、まずは描くことそのものを楽しめる時間を増やしてみてください。
ハサミで切る
ハサミも、
一度だけ切る
↓
短い直線
↓
長い直線
↓
曲線
↓
簡単な形
と少しずつ難しくできます。
いきなり丸をきれいに切らせなくても大丈夫。
「チョキン」と一回切るだけでも、立派な練習です。
のり・折り紙・工作を楽しむ
折る。
貼る。
丸める。
ちぎる。
組み立てる。
工作には、手先を使う経験がぎゅっと詰まっています。
「今日は勉強をしていない」と思った日でも、1時間夢中で工作していたなら、幼児期には十分豊かな学びの時間です。
【運動】特定の種目より「いろいろ動く」
運動についても、
「縄跳びができない」
「鉄棒ができない」
と、一つの種目だけを見て焦らなくて大丈夫です。
文部科学省の「幼児期運動指針」では、4〜5歳ごろは、それまでに経験してきた基本的な動きが定着し始め、友達と運動することを楽しんだり、身近な用具を操作したりする動きが上手になっていく時期とされています。
同時に、幼児の発達は一様ではなく、一人ひとりの発達の実情を見る必要があることも明記されています。
年中では、特定のスポーツを早く習得することより、いろいろな動きを経験してみましょう。
走る・止まる・よける
鬼ごっこは、とても優秀な運動遊びです。
走るだけではありません。
止まる。
方向を変える。
相手を見る。
よける。
いろいろな動きを自然に使います。
跳ぶ
両足でジャンプする。
線を飛び越える。
低いところから跳ぶ。
こうした遊びは、縄跳びなどの動きにもつながっていきます。
縄跳びがまだできなくても、ジャンプ遊びを楽しめているなら、まずはそこからで十分です。
投げる・捕る・蹴る
ボールも、大きなものから始めれば遊びやすくなります。
転がすだけでもOK。
投げる、捕る、転がす、蹴るなど、いろいろな動きを経験してみましょう。
登る・ぶら下がる・バランスを取る
公園にも運動の機会がたくさんあります。
滑り台、鉄棒、平均台のような遊具、ちょっとした坂道。
文部科学省の指針でも、幼児期には「体のバランスをとる動き」「体を移動する動き」「用具などを操作する動き」を、遊びを通して幅広く経験することが重視されています。
また、家庭や園など一日の生活全体を合わせて、幼児が毎日合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましいという目安も示されています。
これは「60分間トレーニングする」という意味ではありません。
散歩や外遊びなど、生活の中で体を動かす時間も含めた考え方です。

【ことば・コミュニケーション】自分の気持ちを伝える経験を
年中になると、友達との関係も少しずつ複雑になってきます。
だからこそ、文字を書くことと同じくらい大切にしたいのが、言葉でやりとりする経験です。
自分の気持ちを言葉にしてみる
「貸して」
「あとで使いたい」
「嫌だった」
「手伝って」
気持ちを全部上手に説明できなくても構いません。
泣いたり怒ったりしながらでも、少しずつ言葉にできるようになっていきます。
人の話を聞く
「長時間じっと座って先生の話を聞けるか」だけで考えなくても大丈夫です。
家庭なら、
「今日何したの?」
「○○した!」
「誰と?」
「○○ちゃん!」
こんな短いやりとりも、話す・聞く経験です。
順番や簡単なルールのある遊びを楽しむ
カードゲームや簡単なボードゲーム、鬼ごっこなどでは、
順番を待つ。
ルールを覚える。
負ける。
もう一度挑戦する。
といった経験ができます。
うまくいかなくて怒ってしまう日があっても、それも経験の途中です。
しりとりやなぞなぞなどの言葉遊びをする
しりとり、なぞなぞ、反対言葉、仲間集め。
こうした遊びもおすすめです。
しりとりは簡単そうに見えますが、
言葉の最後の音に気づく
↓
その音から始まる言葉を探す
↓
ルールに合っているか考える
という複数のことを同時にしています。
まだできなくても、焦らなくて大丈夫です。
絵カードを使ったり、言葉を紙に書いて見せたりすると分かりやすくなる子もいます。
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年中から大切にしたい「自分で考えてやってみる力」
教材を作っていると、どうしても「何を覚えたか」「どの問題が解けたか」に目が向きます。
でも、幼児期に大切にしたいのは、正解できることだけではありません。
「これ、どうするんだろう?」
「こっちかな?」
「あ、違った」
「じゃあ、こうしてみよう」
そんな試行錯誤も大切な学びです。
文部科学省が示す幼児期の姿にも、「自立心」「思考力の芽生え」「協同性」などが含まれています。
すぐに答えを教えない
子どもが困っていると、つい大人は答えを教えてあげたくなりますよね。
そんなとき、
「どうしたらいいと思う?」
と一度だけ聞いてみる。
すぐ分からなければ、もちろん助けて大丈夫です。
大事なのは、一度自分で考えてみる時間を作ることです。
自分で選ぶ
「今日は赤と青、どっちの服にする?」
「絵本はどれを読む?」
「公園で何して遊ぶ?」
小さなことでも、自分で選ぶ経験を増やせます。
大人が全部決めてあげるより、自分で選び、やってみる機会を少しずつ増やしていきたいですね。
年中でできなくても、すぐに焦らなくていいこと
ここまで読むと、
「やっぱり、うちの子できていないことが多いかも……」
と思った方もいるかもしれません。
でも、
ひらがなを全部書けない。
100まで数えられない。
時計が読めない。
縄跳びができない。
一人で完璧に着替えられない。
これだけで「年中として遅れている」と判断することはできません。
特に幼児期は個人差があります。
運動についても、文部科学省は「同じ年齢であってもその成長は個人差が大きい」として、一人ひとりの発達に応じた援助を求めています。
文字や数量についても、国の幼児教育では「○文字書ける」「○まで計算できる」という一律の到達目標ではなく、生活や遊びの中で文字・数量・図形などへの関心や感覚を育てることが重視されています。
ですから、
「○○ちゃんはできるのに」ではなく、少し前のわが子と比べる。
これくらいの気持ちで見てみてください。
ただ、日常生活の中で本人が強く困っていたり、園でも継続して気になる様子があったりする場合は、一人で抱え込まず、まず園の先生など普段の様子を知っている人に相談してみてください。
「できない」ときは、一つ前のステップに戻ってみよう
教材編集の仕事でも、難しい問題につまずいたときに大切なのは、
同じ問題を何度もやらせることではなく、「どこで難しくなったのか」を探すこと
です。
これは家庭でも使えます。
たとえば、ひらがなが書けないなら、
文字を書く
↓
文字をなぞる
↓
線や形をなぞる
↓
迷路・お絵描き
と戻ってみる。
縄跳びが難しいなら、
縄跳び
↓
縄をまたぐ
↓
縄を回す
↓
両足ジャンプ
と動きを分けてみる。
ハサミが難しいなら、
形を切る
↓
直線を切る
↓
短い線を切る
↓
一回だけ「チョキン」と切る
という具合です。
できない=練習量が足りない、とは限りません。
今の子どもにちょうどいい一段階前を探してあげると、「できた!」につながることがあります。

年中の家庭学習は「勉強・生活・遊び」を分けすぎなくていい
「年中になったし、そろそろ家庭学習をちゃんとやらなきゃ」
と思うこともあるかもしれません。
もちろん、ワークが好きな子なら市販教材を取り入れるのもおすすめです。
でも、幼児期は机に座っている時間だけが学習ではありません。
料理をしながら野菜を数える。
買い物で「牛乳を1本お願い」と頼む。
公園でどんぐりを集める。
折り紙を半分に折る。
絵本を読む。
洗濯物を一緒に畳む。
こうした毎日の中にも、数、ことば、手先、思考、生活の学びがあります。
ワークを1冊終わらせることより、
「知りたい」「やってみたい」「もう一回やりたい」
という気持ちを残せるほうが、幼児期の家庭学習では大事だと私は考えています。

年中の「できること」を増やす3つのコツ
一度に全部やらせない
ひらがなも数字も縄跳びも着替えも……。
全部同時に練習すると、親も子どもも疲れてしまいます。
今興味があることを、一つか二つ。
それくらいで十分です。
子どもがやりたがることから始める
数字が大好きなら数字から。
工作が好きなら工作から。
外遊びが好きなら、とことん外へ。
好きなことから始めると、そこから別の学びにつながることがあります。
工作をしていたら数字を使った。
電車が好きで駅名を読んでいたら文字を覚えた。
幼児期には、そんな広がり方もあります。
周りの子ではなく「少し前のわが子」と比べる
これが一番難しいかもしれません。
年中になると、お友達のできることが本当によく見えるようになります。
でも、子どもによって得意なことも、興味が向くタイミングも違います。
1か月前は「やって」と言っていたのに、今日は自分で靴下をはいていた。
前は数えるだけだったのに、今日は「こっちのほうが多い」と気づいた。
そんな小さな変化を見つけてあげたいですね。
まとめ|年中は「できることを揃える時期」ではなく、経験を広げる時期
年中でできるようにしておきたいことをまとめると、
ポイント
文字や数に興味をもつこと。
自分の身の回りのことを少しずつやってみること。
描く・切る・貼るなど手先を使うこと。
走る・跳ぶ・投げるなど、いろいろな動きを経験すること。
友達や家族と言葉でやりとりすること。
そして、自分で考えて「やってみよう」とすること。
どれも、今日から完璧にできる必要はありません。
年中は「できることを全部揃えて、年長へ進む時期」ではなく、私はこれからの学びにつながる経験をたくさん集める時期だと考えています。
昨日できなかったボタンが、一つ留められた。
おやつを兄弟で分けながら、「こっちのほうが多い」と気づいた。
公園で昨日より少し高いところまで登れた。
友達に自分から「貸して」と言えた。
そんな一つひとつも、ちゃんと成長です。
「年中なら何ができるべき?」と不安になったときほど、周りではなく、少し前のわが子を見てみてください。
きっと、思っていた以上に「できるようになったこと」が見つかるはずです。
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